リスボン滞在記

山陽放送OB 安田 了三         

なぜポルトガル?  
 奇しくも今年はポルトガル人が初めて大分県の臼杵に難破船でたどり着いて400年。そんな年に、冬でも暖かく物価も安く、なおかつ治安がよいといわれるポルトガルで1カ月過ごすのも面白いかなと計画しました。
計画策定  
 各種の旅行パンフレットを取り寄せて調べ始めましたが、ポルトガルはパック旅行もあまりないという情報不足の地域でした。たまたま個人旅行のオーダーメイドが可能な【Global《個人旅行》】というパンフレットを見つけたのがラッキーでした。この旅行のシステムは、格安から正規料金までの航空券、五つ星から二つ星程度までのホテル、それに現地での小旅行や鉄道の乗車券などをそれぞれ単独で手配してくれるという便利なものです。  
 航空券はJALの《前売り悟空21》という正規の航空券に決めました。 オフシーズンなのでヨーロッパ往復¥98000です。パリまたはロンドン乗り継ぎでリスボンまでこの料金です。 但し30日FIX、つまり有効期間は30泊31日、往復とも予約後の日にち、便名変更は不可です。 このチケットはマイルポイントがOKなのも気に入りました。  
 次にホテルです。前回のシドニー滞在旅行は自炊の出来るマンションでしたが、今回はそんな施設が探せなかったので仕方なくホテルにしました。地図で調べて町の中の交通の便利なところを検討しました。辺鄙な場所だと中心部への時間や交通費もバカになりません。  
 幸いMundial(ムンディアル)という四つ星ホテルで1泊1室2人で朝食つき9000円が見つかりました。場所的には岡山で言えばJR岡山駅前の老舗ホテル《ホテルニュー岡山》といったところでしょうか。 2人で朝食つき9000円ということは1人分4500円です。どう考えても日本の半額ぐらいなので少し不安でしたがインターネットにもホームページがあり、それを見てここに決めました。行って見て、場所もよく、設備もサービスも良いので大正解でした。       

宿泊したホテル《ムンディアル》                ホテルの部屋から見た公園の夜景

いざ出発  
 関西国際空港発のJALとAF(エールフランス)の共同運航便で機材・乗員ともAF、機種はエアバスA340でした。もちろん日本人の客室乗務員も乗っていますので言葉は心配なしです。面白いのは喫煙エリアが設けてあることでした。現在の飛行機は全ての国で国内・国際便とも全便禁煙ですがAFのヨーロッパ線に限っては喫煙エリアがありました。機体最後尾、客室乗務員用のシートの両側、カーテンで囲った狭いスペースがそれです。  
 エールフランスではこの設備のことをクリーン・エアー・キャビンといっています。右翼側が4人用、左翼側が6人用で、中に入ると鼻を突き合わすほどの狭いスペースで頭上には吸気のファンがブンブン回っています。  
 おかげでかなりのヘビースモーカーの私も3回ぐらいお世話になり、モク切れにならないで済みました。ちなみに帰りのJAL便にはそんな設備はありませんでした。

乗り換え  
 冬の成層圏は西風が強く、パリまで13時間かかりました。ここで乗り換えです。機内で配られたフランス入国カードがあれば以後EU諸国へは何処へ行くにも入国カードは不要との機内の説明でした。  
 パリのシャルル・ドゴール空港ではトランジット(乗り換え)の通路を抜けたところでパスポートを見せて、機内で書いたフランス入国カードを係官に提出して終了、スタンプは押してくれません。そのままリスボンまで行きましたが、ここでは全くの国内便扱いでパスポートも見られず、ましてや荷物検査もなく、いきなり空港の外に出てしまいました。昔に比べて随分簡素化されていますが[本当にこれで良いのかな?]と少し不安にもなりました。
リスボンの印象  
 純粋のポルトガルの人は上背も日本人並みかむしろ少し低いぐらいですが、若い女性は情熱的な瞳とくっきりした額で美しく、男性は中年以後一様にお腹が出っ張っていました。威圧感はありません。リスボン市内には背の高い黒人も20%ぐらい住んでいます。  
 街はうわさに違わず坂道だらけですが、歩道は大理石を割った小石で舗装されています。ただこの小石が曲者で、金槌で割っただけなので表面が凹凸していて歩きにくいことこの上ありません。その上、いたるところ犬の糞だらけで、これを踏まないためにはとても周囲を見ながらゆったり歩くなんてことは出来ません。   そんな事情からか商店街の5軒に1軒ぐらいが靴屋さん、そしてお菓子好きな国民性からかケーキ屋さんも凄い数です。  
 憂愁のリスボンとかヨーロッパの片田舎リスボンなどと旅行案内に記されていますのでどんなに僻地なのかと想像していましたが、どうしてどうしてEU加盟のれっきとした近代都市でした。地下鉄網が4ルートあり、98年のリスボン万博を機に古い町並みを残しながら一方では先進化が進んでいます。
       

リスボン市内と【4月25日橋】                 白と黒の大理石を敷き詰めた美しい歩道

物価
 通貨単位はエスクードです。表記は100$00でアメリカドルに近い表示方法です。100$00は56円位です。一般的な生活必需品は日本で1000円位かなと思われる商品が現地で1000$00程度の値段なので、物価は日本の50〜60%程度ではないでしょうか。GST(消費税)は物によって5〜12%ですが全て内税です。特に生鮮食料品、レストランなどは日本の半額以下なので、他のヨーロッパ諸国からの避暑や避寒の旅行者が多いというのもうなずけます。
 ユーロに統一されたら物価の上昇は避けられません。ポルトガル旅行は今がチャンスかも?  
 最近私たちの旅行は日本円をほとんど持っていきません。さくら銀行のキャッシュパスポート・カード、CITIバンクの銀行カード、それにVISAカードの3種類です。どこのATMでも現地通貨が必要なだけ引き出せるのでとても便利です。日本円を現地で両替するよりかなりレートは良いと思います。
食べ物・飲み物  
 主食はパンです。パンという言葉自体ポルトガル語なのです。料理は地中海と大西洋に囲まれている関係で魚料理が多いようです。また、豚肉と鶏肉もおいしいのですが牛肉は今一つかなと思います。  
 魚は鱈の干物が名産でその他鮮魚では鯵、鯖、鰯、鯛、太刀魚、アンコウ、鰈、鮃、鮭などなじみのものが多く、野菜、果物も種類が豊富です。  
 下町の細い路地では、夕方になるとあちこちで七輪のような道具に炭を起こして、鰯や鯵を焼いています。その匂いは数十年前の日本にたちかえったようでなんとなく懐かしい気持ちにさせられます。もちろんレストランでも魚の炭焼き(グリリャードといいます)はメインメニューで、かなり大きな鰯6匹とジャガイモ、ゆで野菜、スープそしてパンがついた定食が1人前600円ぐらいです。とても1人では食べきれませんので大抵1人前を妻と2人で食べました。  
 チョット高級なものではアンコウ鍋や米を使った魚の雑炊などもあり、塩干し鱈を色々な方法で調理したメニューも沢山あります。  
 お菓子はとても豊富です。あちこちにケーキ屋さん《カフェ》がありそれぞれの店が味を競い合っています。ポルトガル人はとても甘いものが好きなようです。どこにでもある代表菓子はパステル・デ・ナッタです。パイ生地で作ったカップアイスクリームぐらいの大きさのカップにカスタードクリームをたっぷりつめてオーブンで焼いたものです。とても甘いのですが不思議に後を引きません。1個60円ぐらいです。  
 北の都市ポルトではポルトワインが有名です。普通のワインの醸造途中、まだブドウの甘味が残っているうちにブランデーを加えて醗酵を止め熟成させます。このためとても甘いのが特徴です。100年物も売られており、30万円ぐらいします。一方でポルトガルは中級クラス以下のワインも沢山作っています。1リットルの紙容器入りが100円ぐらいで水より遥かに安く買えます。毎日水代わりに飲んでいました。       
     

頬が落ちそうなアンコウ鍋                    丸いのが名物パステル・デ・ナッタ

市内の交通  
 リスボン市内は地下鉄と徒歩でほとんどのところがカバーできます。着いた翌日、外国観光客用の地下鉄の1ヶ月パスを買いました。パスポートの提示を求められましたが1人1300円でした。30日間で110回も乗りましたので1回分は約13円でした。軌道幅900oのレトロなチンチン電車や市内バス、ケーブルカーは別料金でこれは2回分で100円です。坂の町リスボンは200〜300mぐらいの長さのケーブルカーが3箇所もあり、お年寄りや観光客には欠かせません。これも名物のひとつです。         
    

軌間900ミリのチンチン電車                          夜のケーブルカー

観光  
 さすがに古いお国柄らしく国内には世界遺産が8箇所もあります。  
 市の南部、テージョ川の河口近くにある世界遺産の【ジェロニモス修道院】と【ベレンの塔】に行きました。近くには《発見のモニュメント》、瀬戸大橋の見本にもなった2278mの《4月25日橋》などがあり、ライトアップなども含めて3回も見に行きました。団体ツァーでは出来ないことです。  
 リスボン市を離れたところでは【シントラの文化的景観】とヨーロッパ大陸最西端《ロカ岬》、【エヴォラ歴史地区】【ポルト歴史地区】などを見て回りました。これらの地区へは高速道路を利用するバス網が張り巡らされていて値段も安く、国鉄の列車と共に大いに利用しました。  
 《ロカ岬》では自分の名前を古式の書体で手書きしてくれる〈最西端到達証明書〉を作ってもらい記念に持ちかえりました。          
      

発見のモニュメント                    ポルト市内を流れるドウロ川

買い物  
 物価が安いのなら買い物天国では?との疑問もありましょうがそれがチョット事情が違います。 諸外国のように免税店、デパートなるものは全くありません。また、ブランド店もルイ・ヴィトンとダンヒル以外は見かけませんでした。ブランド品は高級ブティック店の商品の一部として売られているのみで、直営のブランド店があっちにもこっちにもあるわけではないのです。それでも30日も滞在していれば高級ブティック店を覗く機会もあり、それなりに色々なものを見つけました。旅行者は11700$00以上の買い物をすれば5〜12%の税金を戻してくれるTAX REFUNDの制度もあり足で稼げば高級品がかなり安く買えそうですが私達には余り縁がありませんでした。  
 たまたまルイ・ヴィトンの店で商品を見ていたとき30才ぐらいの日本人の男性が入ってきてカタログの商品番号だけで、日本で買えば12万円だというバッグを買いました。奥さんに頼まれたそうです。 これが現地では135000$00でした。12%の戻し税がありますので結局67000円で買えたことになります。ナント45%OFFではありませんか!
リスボン良いとこまた行きたい!  
 今回の旅行の教科書はダイヤモンド社≪地球の歩き方≫と昭文社≪個人旅行≫の2冊でした。どちらもかなり正確に書いてあり信頼できるものでした。またポルトガル政府の出先機関≪ポルトガル文化センター≫やインターネットからも情報を取得しました。  
 北半球で岡山より遥かに北に位置するリスボンですが、この期間で気温が6度〜22度と暖かく、雨の日がほとんどなかったのも幸いでした。大西洋の風に吹かれて、安くおいしいワインに酔いしれて旅したヨーロッパのさいはては何か私たちにホッとさせるものを残してくれました。またすぐ行きたくなるような国です。
経費一覧(2人分)
交通費(航空券と出入国税、日本国内のJR等)  ¥242,000
滞在家賃(ホテル代30泊)  ¥270,000
食料費(酒類を含む)   ¥70,000
現地交通費、観光費   ¥50,000
雑費(写真代を含む)   ¥53,000
合計  ¥685,000
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