めじろ
吉岡 猛(RSK OB)
2月21日、朝から太陽が顔を出し風も無い久しぶりの上天気。何気なく窓越しに
外を眺めていると一羽のメジロが庭に来て無心に梨を食べていた。家内に聞くと昨日
冷蔵庫の片付けをして古くなった梨が有ったので庭に出して置いたと言う。体よりも大きな梨を小さなくちばしで忙しくつついて食べる。
梨が好物とは。何とも愛らしく初めて目にする光景を暫く眺めて
いた。どうもツガイで来ているらしい。
一羽が食べている間もう1羽は近くの木の上で周囲を見張っているようだ。2羽が同時にえさを食べることはしない。一羽が忙しくくちばしで梨をつついて食べる。その間にも尾羽根や頭を左右に振る。
羽根をばたつかせる。見るからに忙しい。ものの1・2分、早く食べさせろ
と言わんばかりにサッともう一羽が木の枝から降りて来て食べ始める。
食べていた方は今度は木の枝に上がって頭や羽根を動かせながら周囲を見張る。
食事と見張りの交代の仕方も実に素早い。目に見えない糸で結ばれているのかと思うくらいタイミングが合っている。
尻尾と頭が右に左にピッピッと動き枝に止まった
かと思えばもう次の枝に矢のような速さで飛んで
いく、いくら身軽といえども良くこれだけ動けるものだ。
その時カメラに入れたフイルムの使い残りが少し有ったのを思い出し写してみる事にした。
最初ガラス窓を少し開け気付かれないよう隙間からレンズだけ出してメジロを狙ったが
もっと近寄らないと駄目。庭に出て三脚を立て望遠レンズを付けて待つ。
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何処かに逃げていたメジロは4、5分もした頃庭の木の枝に
帰ってきた。
用心深げに段々と梨に近づいて食べ始める。ピントを合わせる
手の動きやシャッターを切る音に敏感に反応し飛び立って逃げ
てしまう。それならば姿が見えないようにコートを持ち出して
頭から被りレンズだけを出し、ついでに餌の梨もサンシュの
木の股に餌台を作ってその中に入れて待つ。
今度はシャッターを切っても逃げない。
次にはもっと近づきたくなる。少しづつ前へ出ているうちに
とうとう 2mまで近づいていた。
段々なれて逃げなくなった。しかし写しても写しても絶え間なく
羽根や頭など体のどこかを動かせており、どのように写った
のか、また上手く写ったのかも見当がつかない。
使い残しのフイルム5、6枚を使い切ろうと始めたメジロの撮影、いつの間にかすっかり
夢中になり追加の36枚撮りフイルム2本も全部使い切り、気が付いた時には2時間が
すぎていた。鶯色の羽根やメジロ特有の目の白い輪、まるで小さなぬいぐるみのようだ。
バネ仕掛けのような素早い動き、好物の梨を食べる時のしぐさなど見ていて飽きる
ことがない。この日から我が家では庭のサンシュの木に取り付けた俄か作りの餌台に
ミカンやリンゴ・バナナなど好物の果物を入れてこの愛らしいお客様を迎える日が
続いた。 もうすぐ春、人も自然も新しくなる季節。メジロたちも新天地目指して
飛んで行くのだろう。
(平成15年3月・岡山支部情報紙 第53号掲載分)
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